「幽霊について語ること」をテーマに、4本から成る短編集を作りました。短編集と⾔っても私としましては、あくまで1つの世界として描いたつもりです。
誰かが語った物語は、また別の物語を⽣み、形を変え、さらにその物語は別の…と果てしなく広がる。そのようにまるで⽣き物のように繁栄する物語でできた世界に、私たちは存在しています。ヒトは誰でも物語を持っており、雄弁さの差こそあれ語らずにはいられない⽣き物だと思います。特に幽霊の話のようなフィクショナルな語りは、これだけ科学が発展してもなお、はるか古代から現在に⾄るまで存続していて、⼈間の本質的な営みであるように感じます。ですから「幽霊について語ること」、そしてそれがきっかけとなり変化していく⼈間や⼈間関係、その周辺を描くことは、⼈間の潜在的は普遍性を描くことになるのではないかと考えました。
しかし、幽霊映画は数多くあるのに、「幽霊について語ること」をテーマにした映画に出会ったことはあまりないような気がします。もしかするとそれは映画に向いていないからなのかもしれません。けれど私は、このような題材に挑戦してみたかったのです。映画は、現実に「ある」ものを使って、現実には「ない」物語を描きます。その映画⾃体が持っている特性と、この題材の親和性に懸けてみようと思いました。
じっくりと観て、聴いて、感じていただけますと、今まで味わったことのない新たな気持ちをお持ち帰りいただけるかもしれません。粒⼦のような⽬には⾒えない、でも確かに私たちの⾝の回りに存在し、おぼろげに漂っている「何か」を観客の皆さまと共有できましたら幸いです。
このような変な企てに快く(?)参加していただき、真摯に向き合っていただいたキャスト、スタッフの皆さまに⼼から感謝申し上げたいと思います。
監督 山科圭太